非日常が、日常より魅力的な響きを持つようになったのはいつ頃からだろうか?
確かに、非日常には、今まで体験したことのない未知の世界へ誘ってくれるのではないかと期待させてくれる、魅力がある。
でも最近、気づいたことがある。
新しい体験ばかりに意識がいくあまり、毎日淡々と繰り広げられる日常が興味や関心の対象になっていなかった、ということ。実は、日常の中にこそ、毎日を楽しく生きるヒントがたくさん潜んでいるのではないか。
そんな素朴な好奇心から、瀬戸内海の島に「せとうち暮らしの研究処」という、日常の暮らしについて改めて見つめ直す場を創りました。
暮らしのイメージが千差万別である以上、一人ひとりがそのイメージの原石を見つける必要があります。でも、日々忙しく過ごす日常では、原石を探す時間もないし、目の前に存在していたとしても気づかない事が多い。この点が、暮らしについて関心を持つことを難しくさせている原因です。そこで「せとうち暮らしの研究処」では、そのイメージの原石が日常生活の中のどの辺りにありそうなのか、そのテーマをまずは特定していきます。そして、そのテーマが散りばめられた空間に滞在することで、その原石の存在に一人ひとりが本人の感性で気づくきっかけを促す機会を提供していきます。
自分が過ごしたい暮らしのイメージに何となく気づいたら、その次は、その気づきの中に潜む自分の心が動いたポイントに焦点を当てます。自分の感性を頼りに、そのポイントを考察していくと、だんだんそのテーマが面白そうだな、と好奇心が湧いてきます。この、関心度をどんどん掘り下げていく事が、一人ひとりのこだわりへと変化していきます。そうすると、日常の暮らしの中には、自分が最初に反応したテーマ以外にも興味や関心が持てる様々なテーマがあることに気づきます。日常生活というのは一見シンプルに見えますが、実は、色々なテーマが複雑に重層して構成されています。このような持続的な関心の連鎖反応が起こる事が、暮らしをより豊にしていくと我々は考えています。
日常に自分なりのこだわりができてくると、最後は、そのこだわりに自分なりのスタイルで日常に彩りを与える段階になります。この段階は、一人ひとりのこだわりへの関心をさらに持続的に続けていく上で重要な役割を果たします。自分のこだわりを美しく整えていく事で、毎日見る日常の光景が美しくなっていきます。視覚的に自分の目を楽しませてあげる事で、その光景をさらに美しくしていこうというインセンティブが生まれます。このようにして、少しずつ美的感覚は磨かれていき、この過程を経る事で、日常は心豊かで心地よい存在へと昇華していくと我々は考えています。
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